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今考えれば、そのときはまだ会長らしい仕事があったものだ。
制服の写真撮影や、パンフレット、新聞向けの一言紹介文。
中央委員会では張り切って挨拶をしたことを思い出すと、無意識にため息が出た。
独りで憂鬱な気持ちになった俺は、
『今日の部活を業務を理由にサボる』
という後ろ向きな決意を固め、昇降口へ向かう。
前から、見知った先生が現れた。生徒会の担当の先生だ。
その手には何やら大きな段ボールを持っている。
目が合った事に嫌な予感を感じずにはいられないが、無視するわけにもいかず近づく、先生に会釈をした。
「ああ山田、ちょうどいい。これを生徒会室に運んでくれるか?」
言っておくがここは南館一階職員室前廊下であり、生徒会室は北館4階の一番端に位置する。
「は、はいわかりました。鍵はどうしますか?」
「いいよ。たぶん開いているから」
そう言って先生は俺に段ボールを渡す。
見た目より軽かったのが、不幸中の幸いか。
そう思いながら、俺は来た道を戻った。
こんな風に、突然雑用を押し付けられるのもしばしば。もう文句を言う気力もない。
北館に近づくと、徐々に吹奏楽部の演奏が大きく聞こえた。
北館の空き教室はほぼ全て吹奏楽部の練習教室となっていた。
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