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マルグレーテが仕込んだ楔はあと二つ。
その全てが打ち込まれた時、このドームは崩落する。
俺はそれを目指すべく、迅速に次のポイントへと移動した。
「なんやねん!ちょろちょろ逃げ回ってからに!正々堂々かかってきたらどやねん!」
「いやいや、ウエイト差を考えろよ」
ギリギリで攻撃をいなし、かわし続ける俺に、ドラゴンもそろそろ苛立ち始めたようだ。
ちなみにマニラの攻撃は、その威力や迫力には特筆すべきものがあるが、そのぶん巨体のせいか小回りや俊敏性に欠ける。
なので俺のように身軽じゃない者でも、なんとか回避し続けられている現状だ。
「勇者のくせに、ずっこいで!」
とうとう苛立ちも限界にきたのか、ドラゴンはそう一つ吠えると、またまた業火炎の息をぶちまけた。
俺に炎が効かないのは双方織り込み済みなので、ブレスを目眩ましに必殺の一撃をぶちかまそうって算段だろうが、もちろんそうは問屋が卸さない。
「うおっ、と、と、と」
かなりよろめきながらではあるが、俺は壁に激突する古竜の頭突きをなんとか回避。
と、同時に、三本目の亀裂を確認した。
「よし、あと一つだな」
ようやく見えかけたゴールに、俺はほっと一息をつく。
だが、ここで少々トラブルが発生した。
さきほどの頭突きを回避した際に位置取りをミスったようで、気づけば俺は壁際に追い詰められた格好になってしまっていたのだ。
「あはははは。もう、逃げられへんでえ」
迫り来るアメジストドラゴン。
最後のポイントはその向こう側。
回り込もうにも、進路は塞がれている。
順調だった作戦は、一転して危機的状況へと変わっていた。
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