ある晴れた昼下がり

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街に人がごった返し、ただでさえ暑いのにさらに暑苦しく思えるので、俺はどうもこの人混みというのが嫌いだ。 太陽は何に対してそこまでやる気を出しているのか分からないほどカンカンと照っているし、それに負けないくらい蝉が声を荒げている。 俺から言わせて貰えば、どっちも勘弁して欲しいっていう点では共通するものがある。 平日に来ればこんな人混みなんか気にしなくてもいいのだが、あいにく学生の俺は平日に街に出て遊んだりはしない。真面目だから。 土曜日でも良かったのだが、相手の都合が悪いという事で日曜日、みんなの外出デーに映画を見る約束をしたわけだ。 それにしてもなぜ一番暑い昼の二時から映画を見るんだ。映画館の中は涼しいかもしれないが、外は暑いのに…。 しかも俺の彼女はそんなに暑さに強そうにも思えない。大丈夫かな? 「あ、いた……って、何してるんだ?」 待ち合わせの場所に向かう途中、街路樹を見上げる彼女を俺は発見した。 長い黒髪が太陽の光でつやつやと光っており、その黒髪を守るためなのかピンクのリボンのついた麦わら帽子をかぶっている。 その麦わら帽子意外は何故か全て黒で統一しており、バッグも何故か黒。靴下まで黒ってどういう事? しかし黒のワンピースがとても似合っており、ハイヒールのせいか若干いつも学校で会うより大人びて見えるのはどうしてだろう。 とりあえず一点を凝視して動かない彼女に、声をかけてみる事にした。
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