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《満月 の夜》
「じゃあ、この人の所に行って。こう見えてもベテランだから」
そう言って、広いオフィスのような開放感のある部屋の真ん中で、パソコンのモニタやキーボード、周辺機器などの機械に囲まれたカウンターの男が、あたしに一枚の紙を渡してきた。
白いコピー用紙には、『この人』の写真と、地図らしきものが印刷されていた。
「え……?」
あたしはそれを見て思わず、変な声を出してしまった。
「だろ? みんな、そう言うんだよ。よほど珍しいんだな!」
うぐいす色の作業着を着たカウンターの男は、あたしが何か言う前に、そう言い残して他の客の相手をしに去って行った。
あたしは質問も許されず、その場に取り残され、しばらく突っ立っていた。
カウンターの男にいろいろと聞きたいことがあるけれど、他の客の案内にはまだ時間がかかりそうだ。
あたしは短いため息をつき、とりあえず言われた通りにするためその場を引き上げた。
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