第一節 始まり

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《満月 の夜》  「じゃあ、この人の所に行って。こう見えてもベテランだから」 そう言って、広いオフィスのような開放感のある部屋の真ん中で、パソコンのモニタやキーボード、周辺機器などの機械に囲まれたカウンターの男が、あたしに一枚の紙を渡してきた。 白いコピー用紙には、『この人』の写真と、地図らしきものが印刷されていた。 「え……?」 あたしはそれを見て思わず、変な声を出してしまった。 「だろ? みんな、そう言うんだよ。よほど珍しいんだな!」 うぐいす色の作業着を着たカウンターの男は、あたしが何か言う前に、そう言い残して他の客の相手をしに去って行った。 あたしは質問も許されず、その場に取り残され、しばらく突っ立っていた。 カウンターの男にいろいろと聞きたいことがあるけれど、他の客の案内にはまだ時間がかかりそうだ。 あたしは短いため息をつき、とりあえず言われた通りにするためその場を引き上げた。
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