第一節 始まり

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 きぃ、と音を立ててステンレスのドアを開け、大型のキャリングケースを引きながらコンクリートの道路に足を踏み出す。 目の前に広がるビル群の隙間から、夕暮の風があたしを包んだ。 ――あたしの名前は、満月。 読みは“マンゲツ”じゃなくて“ミツキ”。 両親がいなく、施設育ちで、高校生になって施設を出てからは住み込みでバイトをしていた。 けれどどれも上手くいかず、失敗ばかりで転々としていたんだけど……。 そんな中、やっとあたしにも出来そうな仕事を見つけたの! 高校生でも雇ってくれる、しかも高賃金で住む場所も提供される、だなんて好条件! という訳で即決、そして採用、イコール正社員。 なんだか高校生なのに正社員というのも矛盾しているけれど、この際考えないことにする。 ちょっと危険な仕事だけど上手くいけば、一獲千金! ……下手すれば、最悪死ぬけども。
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