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『………で、それが?』
智樹が引っ掛かった内容は分かったがそれが何故疑う理由になるんだろうかと思い聞き直した瞬間、智樹とミハルド両者が遠い目をしたのだから俺の理解力が足らなかったのだろう。
『分かりやすく言うと問題は、何故わしが君達が魔術を知らないと知っていたのかという事。それすなわち君達が魔術の無い世界から来たと言う事を知っていた、ということになる。』
なるほど。ミハルドは俺達が魔術が無い世界から来たと言うことを知っていたから俺達が魔術の件で驚かなかった事に対して驚いていたのか。そこに智樹はいち早く気付いたというわけか。
『もう分かりましたんで大丈夫です。』
それをミハルドから教えて貰ったという事実に泣きたくなるな。
『で、結局どうなんだ?』
智樹が核に触れる部分をわざわざ聞いているが俺に説明をした時点で答えは決まっているが。それがわからない智樹じゃない。きっと本人の口から聞きたがっているだろう。
ミハルドは俺達を見比べた後、わしとしたことが……これだから歳は取りたくないと苦笑を浮かべながらぼやいた。
それは歳のせいじゃないと全力で突っ込みを入れたかったが何分今は答えを早く知りたいのでぐっと堪えた。
『その問いに答える前に一つ、昔話を聞いてはくれまいか?』
暫くしてからそう言った目の前の老人の声はどことなく哀愁が含まれていた。
だが俺は決して忘れない。彼が数十分前深夜、扉にゴマと何回も叫びなから蹴りを入れていた変人だという事を。
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