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「知ってるも何も!
ホテル・レイヴンって言ったら、ホテルの最高峰と謳われる五つ星ホテルじゃないか!」
驚きすぎて声が大きくなってしまった。
ホテル・レイヴンの名はきっと誰もが一度は聞いたことがあるであろう。
『羽ばたくあなたに安らぎの場を』というフレーズと共に流れるCMは誰しもが一度は目にするはずだ。
一日泊まるだけで、車一台の値段は軽く超えてしまうというロイヤルスイートルームは、お嬢様である琥珀でさえも手が出せない。
予約は3年先まで埋まり、ホテルのレストランでのプロポーズ成功率は100%、世界の王族や貴族も来るという噂も耳にしたことがある。
日本のホテル業界を牛耳る会社と言っても過言ではない。
頭で一気に情報が溢れ出して、処理しきれずにいる琥珀に、すずめが柔和な笑みを浮かべて話しかける。
「今度みんなで泊まりに行こうね、おねえちゃん」
頭が痛いのは、脳震盪のせいだろうか。
「で、鷲太朗はここにいていいの?」
千鶴の言葉で現実に戻る。
鷲太朗はお茶を飲みながら平気だと言った。
「今日はハクを任されているからな。
先方は皆、魁を気に入ってくださっている方々だし、魁なら平気だ」
「すまない、わたしのせいで」
琥珀がシュンと肩を落とすと、鷲太朗が頭を撫でた。
「謝るんだったら、安静にして早く治すんだ。
ちゃんとご飯食べて、ちゃんと寝ないと治らないからな」
「分かった…」
鷲太朗はこうやって、さり気なく琥珀の身体の事を心配して、誘導するのがうまいのだ。
だから琥珀も変に気負わずに済むのだ。
ふと琥珀は時計に目をやって、慌てだす。
「もうこんな時間だ!」
思わず勢いで立ち上がりそうになるが、足の捻挫を思い出して、何とか思いとどまる。
「どうしたの、何か予定でもあるの?」
梟の問いかけにも、思わず慌てながら答えてしまう。
「今日は白鳥流での会合がこれからあるんだ」
「足がそんな状態なんだから、泊まっていけばいいのに。
その足だと、移動も料理もお風呂も大変でしょう?」
千鶴の言葉は正直とてもありがたい。
出来ることなら甘えてしまいたいが、白鳥流が不安定な今、会合を自分の事情で穴をあけるわけにはいかないのだ。
「ありがたいが、今日の会合はどうしても外せないんだ」
千鶴は残念そうな顔をしたが、すぐに機転を利かせる。
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