白鳥の味噌汁

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のこされた男ふたりは、三人が行った方を見ながら口を開く。 「災難ですね、はくサンも」 「そうだな」 「はくサンの純潔が奪われないといいのですが…」 「…そうだな」      *   *   * 「いやー、良いお湯だったわねー」 「そうだねー」 ほくほくと頬を上気させている千鶴とすずめに対して、琥珀はぐったりとしている。 三人でお風呂に入ったのだろうが、自由に動けない琥珀は、千鶴やすずめにされたい放題だったに違いない。 準備に行ってくれていた梟と隼人も既に戻ってきていた。 「はくサン、無事ですか?」 「なんだかやつれてない?」 つばめと梟が心配そうに、琥珀の顔を覗きこむ。 「大丈夫だ…」 何とかそう答える琥珀を引っ張るように、千鶴が連れていく。 「さぁ、髪を乾かして、会合の支度をしてしまいましょう。 着物でいいんでしょ?」 琥珀は助けを求めるように梟たちの方へと腕を伸ばしたが、彼らは穏やかな笑みを湛えて、手を振るだけだった。 数十分後、琥珀がさらにぐったりとして戻ってきたことは言うまでもないだろう。 「鷲太朗、準備ができたわ!」 にこにこと笑う千鶴は、琥珀で遊び倒して満足したのだろう。 肌が以前より艶々と光っているように感じられる。 千鶴の言葉を合図に、襖が開いてすずめに手を引かれながら、琥珀が部屋に入って来た。 今回は赤みの強い、あざやかな紫の着物だ。 突然準備させたとは思えない立派な着物である。 「いってらっしゃい、おねーちゃん、しゅーちゃん」 すずめが小さく手を振ると鷲太朗は迷うことなく、琥珀を抱きかかえる。 琥珀は驚いて小さく悲鳴を上げたが、文句を言えるわけもなく黙り込んだ。 「じゃあ、行ってくる」 鷲太朗はいたって冷静であるから、この行為を何とも思っていないのかもしれない。 それとも、琥珀だから何とも思っていないのか。 琥珀は足の鈍い痛みと共に、小さく胸が痛むのに気が付かなかった。      *   *   * 「ハク、痛むか?」 車内で最初に鷲太朗が尋ねてきたのは、琥珀の怪我のことだった。 「大丈夫、雁屋さんからいただいた薬が効いて、痛みはない。 カンちゃんは、わたしの怪我なんかは気にするのに、魁のことは心配しないんだな」 そう言って琥珀が笑うと、鷲太朗も微笑む。
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