白鳥の味噌汁

39/40
599人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
「今日は迎えも俺が行くから、校門のところで待っていてくれるか?」 鷲太朗の言葉に琥珀はフォークを置く。 「そんな、帰りまで申し訳ない。 捻挫してるとはいえ、バスを使えば平気だ」 「怪我人は無理するな。 悪化したら俺が魁に怒られる」 琥珀は納得したわけではなさそうだが、言い返すこともできず渋々頷いた。 「それにその怪我だとお風呂も入れないだろうから、ちづが連れて来いって言うんだ。 内心はちづが一緒にお風呂に入りたいだけだと思うが」 確かにこの足の怪我だとお風呂もまともに入れない。 「それでここからは魁と話し合って皆で決めたことなんだが……」 鷲太朗は気まずそうにマグカップを机に置く。 琥珀はキョトンとパンをくわえながら鷲太朗を見た。 「琥珀の怪我が治るまで、こっちの家で生活しようってなったんだけど、どうだ?」 「え?わたしが魁の家にお世話になると言うことか?」 「そうゆうことだ」 鷲太朗の突然の提案に、琥珀はくわえていたパンを落としそうになる。 「いや、でも、それは」 言葉を詰まらせる琥珀を見て、鷲太朗はさらに言葉を続ける。 「ハクは気を遣うかもしれないと思ったんだが、怪我もしているし、いまこっちの裏で怪しい動きがあるんだ。 俺たちの近くにいたほうがいざとなったときに守れる」 急に厳しい瞳に変わった鷲太朗を見て、琥珀はドキリとする。 「結婚式の準備をしたときと同じようなものだ」 「そうかもしれないが、今回はわたしが頼ってばかりになってしまう」 「そんなことはないさ。 無理のない程度でまた、仕事を手伝ってくれ」 鷲太朗は優しく琥珀の頭を撫でる。 彼に言いくるめられている気がしたものの、琥珀はおとなしく頷いた。 「怪我が治るまでお世話になります」 お辞儀をする琥珀を見て、鷲太朗は優しい笑みを浮かべた。 「さ、そろそろ家を出よう」 鷲太朗に言われて、琥珀も立ち上がった。 さり気なく鷲太朗が琥珀の荷物を持ってくれる。 さらに、再び鷲太朗は琥珀を抱き上げようとするが、琥珀は全力で拒否する。 「だ、大丈夫だ、カンちゃん! ほら、松葉杖にも慣れておきたいし」 慌てて言い訳を並べる琥珀に、鷲太朗はそうかと言って、琥珀の身体を支えるように肩を抱いた。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!