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「お姉ちゃん」
「ん?」
「やっぱり暇そうだからあたし帰る!」
「えー…、まぁ分かったわ。気を付けて帰るのよ?」
「はーいっ」
お姉ちゃんが角を曲がるまであたしは手を振り続けた。
姿が見えなくなってからすぐに元来た道を戻る。
見つかる保証は無い。
だけど足が動いていく。
けれども見つかるわけでもなく。
「っ……、ハァ。疲れた……」
人通りが少ない薄暗い路地へと迷い込んでしまった。
ここは何処……?
こんな所来た事無い。
知らない間にどこかで道を間違えたのか住宅街から離れてしまった。
「やっちゃった……方向音痴なの忘れてた……」
セレナは重度の方向音痴。
気を抜いて何も考えずフラフラ歩いているとすぐ迷う。
自分自身に呆れていると小さな物音がした。
空耳かと思ったが耳を澄ましていると、やはり聞こえてくる物音。
「…………」
息を殺して神経を耳だけに集中させ口をつぐむ。
──ドサッ
何かが倒れる音がした。
近いことは分かる。
辺りを見回し目に付いたのは路地裏へと続く道。
「よし」と呟き慎重にそこへ歩き始めた。
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