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おかしいな。いつものように家を出て、いつものように学校に行き、いつものように帰ってくる………それが出来ないんだ。
何でかって? それは……
「お前に恨みはない。だが見られたからにはしょうがない。素直な性格とお人好しが仇になったな」
僕の目の前に立っているこの人に、刀で貫かれたからかな――全く、なんの冗談なんだろ。
そう考えている間にも、死は刻々と近づく。地に伏している僕の周りには、かなりの血だまりが出来ており、伝えてきている。
“お前はもうすぐ死ぬ”っと
だんだんと意識がはっきりしなくなる。
「あぁ、死ぬ前……に一ついいで……すか?」
「……………何だ?」
男は僕の願いを聞いてくれるらしい。
「だが、聞くだけだがな」
と追加して。
けど有り難いな。
力が入らないが、何とか顔を地から上げ、震える唇を開き言葉を紡ぐ。
「両親に……今まで育てくれて…………ありがとうって………先に旅立って……親不幸者……で……御免なさいって……伝えてく…だ……さい」
「………………聞くだけは聞いた。私は行くぞ」
男は身を翻し去ってしまう。だが、不思議と確信を持てる。
必ず伝えてくれるだろうと。
さぁ、これでやるべき事はやったな。あっ、なんか眠くなってきたな、不思議と。
僕はだんだんと目を閉じていく。
そして、少年は静かに息を引き取った…………
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