プロローグ

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 母親に男の影が見え始め、我が家に出入りするようになってすぐに俺は叔父が経営している職場のバイト募集の貼り紙をたまたま見かけた。  思い切ってそこで雇ってもらい、早朝に新聞配達のバイトを始めた。  本当はそういうのはいけないことなのだが、そうしないと俺は居場所のない家で、いつまでも肩身の狭い思いをしなければならなくなりそうだったからだ。  正式に雇ってもらったわけではなく、叔父の手伝いをして小遣いを貰ってる風な形で給料を受け取っていた。  ギャンブル依存症気味の母親には、内緒で毎月全額振り込んで貯金に回していたから相当な額になる。  俺名義の口座に250万ちょいぐらいか。  我ながら出来た子供だと思う。  これから新生活をスタートして、学生寮に入居して、新しいバイト先を見つけるまでにかかるもろもろの資金はしばらくはもつだろう。  就職して一人暮らしすることも考えたが、いけるなら高校ぐらいは出ておくかみたいな考えで今現在に至る。  入学手続きだかなんだかいろいろ親にしてもらわなければいけないことも有るが、それについては、義父になった男に話を通してある。  邪魔な年頃の義理の息子がいなくなればそれに越したことがない男は二つ返事で俺の提案に賛成してくれた。  高校生の義理の息子が襖(ふすま)一枚隔てた隣り部屋にいては、母親といちゃつきたくとも出来ないだろうしいろいろ神経もすり減らすだろう。  そんなわけで、義理の父親の協力もへて、俺は今年の4月から晴れて、高校生になり、息の詰まるような両親との同居生活からも解放されるわけだ。
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