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兄貴が突拍子のないおかしな行動に出るのは、いつも俺のことを考えてのことなのが、解るから、俺は余計に辛くなるんだよ……
「もう、怒ってないし、何ともないから、だから、やめてくれ!」
俺は兄貴の右手を両手で掴んだまま懇願した。
「翼……俺を許してくれるのか?」
「許す?俺に、なにしたかすらわからないんだろうが……」
「何したかはわからんが、翼を怒らせたのは事実だ」
「もういい。許すから、このまま保健室行くぞ!」
「俺は翼に嫌われたら、生きてる意味ないんだ」
兄貴はそういってうつむいて前髪に隠れて表情は見えないが、泣いているのか肩を震わせていた。
「なぜなら、俺にとっての世界は、翼だから」
そう言って、顔を上げた兄貴は泣いてはいなかった。
まっすぐに俺を見つめる その瞳は、何よりも純粋でそして淀みがないように見えた。
そして、狂気に満ち満ちていた。
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