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「俺は翼さえいればほかに何もいらない。
翼に必要とされない自分も翼以外の全ても、なにもかもだ」
兄貴がそう言葉を続けるけど、兄貴がなんで俺なんかにそこまで執着してるのかわからない。
俺はズボンのポケットからハンカチを取り出して、兄貴の左手首に巻きつけてとりあえず応急処置の、止血をしてやる。
きつく縛り上げて血液の流れをせき止めてから、シャープペンを抜かなければ、太い血管を傷つけていた場合、大量に出血するだろうから……。
詳しくはないからコレで応急処置の仕方があっているのかわからないが、とりあえず出血は多少抑えられたはずだ。
「…………」
俺は、無言のまま兄貴の腕を掴んで保健室へと向かう。
保健室は、たしか職員室を通り過ぎてすぐあったはずだ。
試験を受けに来た時に手渡された学校案内のパンフレットに、校内の簡略化された地図があって、とりあえず職員室と保健室と手洗いの場所は印をつけて覚えて、把握しておいたから知っている。
途中通り過ぎる生徒達が、兄貴の左手の惨たらしい状態をみて、何事だろう?と言いたげに、目を丸くして驚いた表情でこちらを伺ってから、数人通り過ぎたが、教師には遭遇しなかった。
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