プロローグ

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   ひらりひらりと羽雪が舞い、幻想的で美しい光景がある。  あたり一面の銀世界が目の前に広がっている。  まだ誰も歩いた痕跡はなく、ふわふわと綿毛のように柔らかな雪の絨毯が、綺麗に敷き詰められていた。  薄暗くて誰もいないような早朝に、俺は起き出してきて、窓ガラスを一枚隔てて、その幻想的な風景を見ている。  俺が暮らしている街は比較的暖かいほうなので、積もる程に雪が降るのは珍しい。  両親が離婚して、それぞれが父親、母親に別々に引き取られ、唯一の兄弟だった兄と別れたのもこんな雪が降りしきる、寒い日だったと思う。  こんな風にたまに雪が積もって、あたり一面が銀世界になると兄は決まって、このベランダに立ち、立ちションをして小便を飛ばして雪を溶かして遊んでいた。  そのせいで後日、風邪を引き、大事な部分が霜焼けになったりしていた。    馬鹿は風邪引かないというのは迷信である事を身を持って証明してくれた兄は、はっきりいって、まるきりアホだった。  そんな兄貴がまだ幼かった当時、父親に引き取られて引っ越す去り際に俺に言った。 「てがみお、かくから、こっそりじゅうしょをおしえてくれ!」 「ながねんくらしてた、じぶんちのじゅうしょくらいおぼえとけよ、カス」  というやり取りを俺として、兄は父親と共に去った。
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