プロローグ

4/6
前へ
/100ページ
次へ
 幼かった頃の俺でもなんとなく、自分の兄が普通じゃないと言うことは理解していた。  突拍子もない発言や行動を繰り返す兄の面倒を見ていた母親は、目を離した隙に何をやらかすか、解らない長男のせいで、24時間、心が休まる暇もなく、ストレスで神経をやられ、ヒステリーを起こしたり、頭を掻きむしって髪を抜いたり、酒びたりになったりしだして、おかしくなってしまった。  母に子育ての全てを一人で任せきりにして背負い込ませた罪悪感から、見るに見兼ねた父親が、そっと離婚届けにサインをして母親に渡し、兄を連れて去っていったという事情があったそうだ。  幼かった当時は両親が別れた理由等は理解出来ず、高校生になった今、母親の口から聞いて最近知ったばかりだ。  そんな俺は今年の春に全寮制の男子校に受かり、その学園に入学する事になった。  全寮制でしかも男子校とか最悪すぎる環境ではあるが、仕方ない。  地元で他に受けた共学の高校もあったが、バイト禁止だったし、校則が厳しい所ばかりだった。  俺が通う予定の学校は、全寮制で男子校なのを除けば、校則はわりと緩い方だ。  母親がバリバリの外人で(何人とかはあえて伏せる)母親に似た俺も金髪なもんだから、校則が緩い所のが理想だ。  髪を黒く染めるよう言われたりするような校則が厳しい所には行きたくなかった。  この時の俺はまだ入学したその学園で、ある意外な人物と再会を果たす事になるとはまだ知るよしもなかった。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加