~魔王~

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『おい。“単独行動禁止”はお前が提案したもんだよなァ?』 「ウルサイダマレ。っつか勝手に出て来んな」 顔の右横からヌっと現れたのは鋼鉄の肌をもつドラゴンの顔。 俺の身体に住まわせてやっているというのに、外出許可もなく勝手に外に出てくる悪い子め。     他でもない、神竜が一つエーレインクルシオだ。     ひょんな事から出会い、俺の片腕一本でコヤツの封印をなんとかぷち壊し、片目一つを代償に竜の力を貸すという契約をした竜である。     ふっつーに力を貸そうもんなら二、三日は寝込む激痛と無駄な魔力・精神力・体力消費のオンパレードらしく、さすがに使う度に寝込むのは嫌なので、ある程度の犠牲を払って何とか人の身でも使えるようにしてもらっている。 ま……封印を解除したはいいが、エーレの本体ちゃんが邪龍大戦の時に消失しちまってて、エーレの力のみの封印っつー事になるのかな? 実体がないんだよね、コイツ。     だから何かに憑依しないとダメだったらしく、たまーたま、俺の眼球に宿る形で外に出られたわけだ。     ちなみに、俺の顔の横から出てきているのはエーレそのものではない。さっきも言った通り、体はとうの昔に失くしている竜なわけだ。 魂、力、覇気、氣、意思、精神その他もろもろ……。 およそ物理的なものとは関係のないもの達が、あまりにも強力過ぎて“実体化”してしまっている投影に他ならない。     バリバリ現役並みの強さを誇る事から、当時は一体どれほどまでに凄まじかったのやら。 『街で出るのはヤめろ、とは言われたけどなァ。ここは街じゃねェよな? あァ?』 長く付き合ってると、屁理屈まで言うようになって来たか。やれやれな竜さんだ。    
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