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しかし、命令され、またいつ襲いかかって来るかわかったもんじゃないのでコイツらはとりあえず無視して上を目指す。
パシュン
籠手に取り付けられた鉤爪が勢いよく噴出され、テキトーな高さでがっちりと何かにひっかかる。
俺が全体重かけても大丈夫な事を確認し、あとは籠手に魔力を流すだけ。
鉤爪と籠手とを連結するマジックワイヤーが巻き取られ、俺の体が上に引っ張られていくという単純なアイテムだ。
流す魔力量でワイヤーの巻き取るスピードが異なるという優れもの。つっても、使った後ぶっ壊れちまうんだけどな!
うら悲しい!
『…………えっ? 何? え? こっ……うわぁ……床に……穴って、うーわ……』
微かに足元から聞こえてきたのは、ここの塔主の変わりはてた口調。余裕ぶっこいてた反面、対処できない事態にぶち当たり冷静さを失ったな?
拡声鬼を通して可哀相なセリフが丸聞こえなのがなんとも哀愁漂う。
『ダンジョンの攻略って言やァ……冒険家にとっちャ醍醐味なんだろォ? いいのかよ、こんなザックリ攻略しちまってよォ』
「見た感じ最下層でアレだともはや宝のカスですら無さそうだぞ? 塔の材質は石。劣化具合からみて築三百年以上。各階の構造も入り組んでなさそうだし、ホント、ただ住むためだけに建てたもんだろ。そこにモンスターが住み着いた」
上方へと体が引っ張られ、着々と最上階を目指す中、俺は考えていた。
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