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一町の領主が、気配を完全に絶った俺を見抜くか普通。
「それで済めばいい話だがな、違う。今確認できた。来て、良かった。違うな。今のお前さんをこの目で見ておいて良かった。おっと、近づくな。動くな」
予兆として、ヨルオムが何か行動に移ろうとしていたので待ったをかける。
「まだ何も、ろくに会話もしていないのに決め付けるのは」
「いや、話はもういい。何企んでやがる」
「何も。強いて言うなら、平和ですかね」
嘘だ――ただし、真実味がある。ここだ。俺が不可解なのは。
敵という認識を俺がしているのにも関わらず、こいつから発してくるオーラは味方だよ、と優しく訴えかけてくるもの。真逆の意思が混在した理解しがたい状態。
マジで何考えてやがる。何がしたい。多重人格? 違う。もっと複雑な背景がそこにはあるように思える。
「どういった“状態”だ? お前」
「状態、ですか。……なかなか核心を突いた質問を投げかけてきますね。好きですよ、そういうの」
「戦るなら戦るではじめようか」
「物騒ですね、考えが。さっきから言っているように“私”には争う気がない」
「こちとら物心ついた時からずっとアンダーテイカーなもんでな。理解できない状況は回避か闘争で切り抜けるって手しか知らないんだよ」
「で、闘争を選んだわけですか……」
「アンタが攻めてきたらな。その気配がないから不気味に思ってんだろうが。もう一度言う。どういう状態だ?」
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