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「まぁ、“これ”は私とロインさん、あなただから成り立つ“構図”なんですがね。“これ”をなくすためにも依頼の方、完了させてくださいね? ではもう少し強くいきますよ?」
ちょっ――バカ野郎!
ガッ、ゴガガガガガガ!!
いででででで! ほぼ体の半分が壁に埋まってしまっている。前からの圧は痛くはねぇけど、めりこんでる背中が普通に痛い。
コイツ……このバカ。
魔法や力なんかで押されてる感じじゃあない。
何か理由があるんだ。倒す云々より前に、触れることすらできねぇのかっ。俺とアイツとの構図だぁ? なるほどな。
よし……よし、よし。いいだろう、いいよ、仕事はやってやる。
今は、恐らくだが現状でヤツと俺との“構図”とやらは上下の関係なのだろう。なんとなくわかってきた。
コイツが何で、どんなヤツで、どれくらいの“量”なのかが。
それをとっぱらう。土台にすらあがれていない俺が戦闘だなんておこがましいのだ。
「そこで待ってろクソ野郎」
恐ろしく格好の悪い捨て台詞をはくと、
「ふっ、私はここから動きませんよ」
ヨルオムは向けていた手のひらを微妙に動かし俺の体を操った。
壁を突き破ってまだ遠くに飛ばされる。おぉ、速い速い。
館が町の端ということもあってか、俺はすぐに町の外へとほっぽりだされてしまった。
十分町が小さくなった頃、ようやく体の硬直も解けて背中から地面へと落ちる。
いやーまったく……。今回もドえれぇ敵に目ぇつけられちまった。
「ふぅぅぅぅ……遠いな」
朝焼けに染まる空の事ではない。ましてや離れてしまった町の事でもない。
大の字に寝そべったままの状態から体を起こし、町にむかって中指を一本おっ立て一人考え込む。
滅ぶ道を選ぶ理由というものを――。
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