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ぶっきらぼうに放った言葉に、上のヤツは一瞬殺気を漲らせたがすぐに消し去り、
「覚悟は出来ているつもりだが今は死ぬには早いのでな。なすべき事がある。“今”死ぬわけにはいかない」
何故か俺に対する憎悪のようなものを含ませていながら、殺さない気持ちも同時に感じたのでエーレは黙って今の様子を見ているわけだ。少しでも妙な気を刃物に込めていたならば即座にエーレが反応していたはず。
そもそもエーレに気付いているならばコイツは明らかに神竜とどこかで噛んでいる連中の一人と見なせる。
逆にエーレの事に気付いていない……が、何かしらの“モノ”を俺から感じ取り一歩手前で手を止めたコイツの勘やセンス、諸々を踏まえた力量の高さを買う。
ぶっちゃけどう転んでも俺においしい話ではないのは明らか。
不気味ではあるが今のところ“害”はなさそうである。
だから安心とは言えない状況だけど……。敵か味方かそのどちらでもないのか。
一番イヤなのはコイツが単なる変質者。夜な夜な動けない男に対して上に乗っかり、刃物を突きつけるのが趣味なヤツである事だ。可能性としては限りなくゼロには近いものだが、世の中ってやつは広いもの。
「じゃあ殺されるような事をしねー事だな。何の用だよ。男を上に乗せる趣味は生憎持ち合わせてねぇんだけども」
これが美人であったならばしばらくこの姿勢と下から眺める景色を楽しんでいたものを。
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