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乗っかっているのは、薄暗がりからじゃハッキリとまではわからないが、オッサンである事に違いはない。声も女のものじゃねーし。臭いも女とはかけ離れている。
特徴を述べよ、と言われても……そうだなぁ。ヒゲが変なだけかな。くりんくりんだ。くりんくりんのヒゲしたオッサンが俺にまたがっている。
「反吐が出る。主の命令でなければ貴様のような小物に頼みごとなど……」
頼みごとだと? ほーう。つまり、今回コイツが俺を襲撃しに来たのは主の命令があったからであり、心情を察するにコイツの意見と主の意見は真逆を行っている。しかし命令だから俺に頼まなくちゃならないのだがそれが屈辱的、そんな感じかな。
エルフやヴァンパイア並の人間の見下し方してるなぁ。
あ……俺の知ってるヴァンパイアはそんなプライドはなさそうだったけど……。
「お? やぁっと話が進みそうな雰囲気だな。お前には主がいるのか? 死ねないってのと関係してるのかね? ん?」
「……行き先を伝える」
「おいおいおいおい。いきなりだなオイ。まだ動けねーっての、俺。見りゃわかんだろが。そもそも行くっつったか?」
不機嫌極まりないオーラを漂わせつつ、くりくりヒゲ男はおもむろにズボンのポケットから小さな紙切れを取り出した。
受け取れとその紙を見せてはくれるものの、腕があがらない。義手外してあるみたいだから動く腕は限られているし、その腕があがらないのだ。
あ、イライラしてる。
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