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エーレに取れと指示したところで掴めるわけもねーし、雷で黒焦げにされでもしたらたまらない。相手は紙切れだ。
結局枕下に忍び込ませるという形でその場は収まったが、紙の内容を読み上げりゃ良かったんじゃ、と思うのは俺だけか?
わけのわからない来客者は不機嫌なまま部屋をあとにし、残された俺は何しに来たのかわからないそいつに対して若干の怒りを覚えるわけだ。
『で、一体何の紙だったんだァ? そりャ』
「行き先がどーとか言ってたよな。行ける体かっつーの」
『俺様がとってやるよォ』
えっ!? とってくれるの? っつか取れるの!? エーレは俺の体から出てくると、徐(おもむろ)に鼻先を枕につっこみ、もぞもぞとしだした。
お陰様で枕にヘッドを乗せていた俺は首が変な方向に曲がったまま枕から落とされてしまったが。
もぞもぞが止まる。
エーレが紙を口に咥えて俺の眼前に持ってきてくれる。
それと小さな玉と。意外と器用な事するのな、コイツ。
「なんだそれ?」
俺がそう聞くと、
『ぺっ! 俺様が知るかよ。さっきの野郎ォが一緒に置いてったんじャねェのか?』
紙を吐き捨て不機嫌な顔になるエーレ。
なるほど、それもそうか。探知魔法が使えればこの玉が何なのかわかりそうなものだが、今は腕も動かせない。
幸い二、三日も何もしないでいたので魔力は十分回復しているようで、あとは体に蓄積されたダメージの処理ってところか。
この分だと詠唱抜きで多重に回復呪文でもかけていくくらいで少しはマシになるだろう。
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