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見渡す限り真っ白な空間に人間と緑色。だが動いているのは緑色だけである。
「なあ! なあ! 起きてーなにーちゃん!」
その緑色は尻尾をブンブン振り回した。
尻尾と同色の胴体は玉のように丸い。そしてその玉を支えるように二つの銀色の羽がキラキラと光る。
「う、うーん……、
ここはドコ? わたしはダレ?」
いつもはボケない冬弥だが、お決まりのギャグを決め込んだ。
「ベタなギャグかまさんといてぇなぁ。まぁ、落ち着いてから話を聞いてくれればええねんけど」
緑色は腕を組んで話し始める。
「うん。落ち着けないよね、どう考えても」
頭が正常に回っていないのか、冬弥は状況をまだ飲み込めていない。
「まずは自己紹介や。わいは夢の精霊、名前はムームー。よろしくな」
そんな冬弥をさておき、自己紹介を始めたムームー。
「今落ち着けないって言ったよね!?」
頭は働いていなくてもツッコミだけは怠らない。
ムームーは尻尾を振り、握手を求める。しかし、冬弥は手を握ろうとはしなかった。
「確かに精霊っぽいけど、ちょっと信じれないよ。大阪弁だし、怪しいし」
冬弥は疑いの目でムームーを見た。
「まぁ、そう思うのも無理はないわな。でもわいはにーちゃんのことならなんでも知っとる。成績の事やら好きな人、そして明晰夢を見たいことも」
ムームーは納得しながら、しかしそれでいて言い聞かせるようにそう言った。
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