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冬弥と圭は中学校からずっと一緒だった。無論クラスも同じである。
「もう入学式から1ヶ月たったのか。早いもんだよな」
圭は見慣れた通学路を歩きながら言う。桜も散ってしまって味気なくなったこの通学路を二人は淡々と歩いている。
「そうだな。しかし明晰夢を見るにはもっと時間が必要だよ」
「明晰夢? ってなんだ?」
圭は疑問を口に出した。明晰夢を見るためには訓練が必要で、夢だと自覚していなければいけないなど、説明するのが面倒に感じた冬弥は、
「うーん。簡単に言えば夢を操れるってところかな」
冬弥は簡潔に、重要で明晰夢の一番の魅力である『夢を操れる』という点を要点をかいつまんで説明した。
「なるほど。俺が見れるようになったら、そうだな……、
美女のハーレム天国だ!」
圭は鼻を膨らませてそう言った。この男はやはりそういう男であった。性に対して正直で忠実である。
「それで? 冬弥は何が目的なんだ?」
「えっ、あ、いや……特に何もない」
冬弥は無関心を決め込み、無表情で圭にバレないように答えた。
「何もないってこたぁないだろ。夢の中で愛しの綾咲とキスでもすんのか?」
「そ、そんなことしないよ!」
動揺を含んだ表情が表に出る。圭は心を読まれているのか、と思うほど正確な質問を冬弥に投げかけた。
(圭鋭すぎ……)
「じゃあ何をすんだよ。この口の固い圭様になんでも言ってみなさい」
圭は胸を強く叩いて冬弥に言った。
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