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「ほ、本当に何もないって。何かあったら圭には言うようにしてるんだから。千早ちゃんのことだって真っ先に言っただろ?」
「んー。そう言われればそうだな。冬弥が隠し事なんてしないもんな」
「そ、そうだよ。早く行こうぜ、なっ」
冬弥は少し罪悪感を感じながらも圭を急かして教室へ向かった。
でかでかと立つ渚高校の校舎はどこにでもあるような形だが凛としていて立派である。
(危ねー。でも圭にならバラしていいのかも)
教室に入った二人はそれぞれの席へ着いた。
冬弥の席の近くには千早の席がある。そこに二人の少女が、冬弥にもギリギリ聞こえるぐらいの声で会話を始めた。
「ねー。ちーちゃんの好きな人教えてよー」
声の主は静香佳奈〔シズカ カナ〕。名前のわりに全然静かではない。
圭と同じく茶髪で、肩にもかからないショートカット。いつも元気いっぱいの千早の親友である。
「嫌だよー。ていうかいないもん」
千早は手を横に振って、いないということを肯定した。
「絶対ウソ。好きな人ぐらいいるでしょー。白状しなさいー」
千早に覆い被さったまま佳奈は言う。
それを見た冬弥は、
(いいなー。静香さん。俺もせめて会話ぐらいは……)
冬弥は寝たふりをして、聞き耳を立てることにした。
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