1.明晰夢〔メイセキム〕

7/7
前へ
/46ページ
次へ
高らかにチャイムが鳴り響く。 学校が終わったのをチャイムに知らせてもらい、冬弥は帰る支度をする。 「圭ー。今日も一緒に帰ろうぜ」 「悪い冬弥! 今日はアンモニア猪木の新しいDVDが出るから、先に帰らしてもらう! 限定版だから急がないと売り切れるー!」 圭は教室からすごい勢いですっ飛んでいった。 (仕方がない、一人で帰るか) 冬弥は寂しく一人で帰路につく。あまり遠くない家に向かって順調に歩き始めていた。 家に帰ると、母が夕食の準備をしていた。 「ああ冬弥。お帰り」 「ただいま」 素っ気ない返事だが、冬弥は両親と仲がとてもいい。抜群の親子関係といえるだろう。 軽快に階段を上って、部屋に着いた。冬弥はカバンをおろしてベッドに横になった。 (どうしたら千早ちゃんは振り向いてくれるのかな……) 長い黒髪、顔立ちの整った容姿。花に例えるなら百合のようだ。 冬弥は不釣り合いだ、と思った。 そう考えていると、冬弥は激しい睡魔に襲われた。寝てしまう直前、冬弥は今日こそ夢が見れそうな気がしていた。 この睡眠が今後を大きく左右するとは、夢にも思わずに……。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加