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『遺産相続の話しもあるけん。少し時間ばかかるけん、和子は喫茶店で待っててくれたらよか。』
美智子は気を遣ってくれて、無理矢理、千円札を私の手のひらに掴ませた。
で、今、一人でコーヒーなんか飲んでるとこ…コーヒーをゆっくり味わうなんて何年ぶりだろう。
はぁ…なんか…疲れたみたい。
人生にも…さっき見てしまった電車の窓にも…。
『あのぉ~、お姉さん、お酒は好きぃ~?』
いきなり声を掛けられて、思わず、コーヒーカップを落としそうになってしまった。
視線を声のした方に上げてみると、金髪の派手な髪型をした外人さんがいた。
…いや、日本語だから、日本人…か。
『…何ですか?私は、あなたを存じ上げませんけど。』
『ねぇ、お酒は飲めるぅ?ねぇ、お姉さん、さっきからずっと一人でしょ?ねっ、僕と一緒にお酒飲まない?ぷぷぷっ!お姉さん、僕の好みなのぉ~!』
この…外人みたいな若いお兄ちゃんは、こんなオバサンを誘っているのだろうか…。
少しくらいな…いやいや、違う。
これは…詐欺の手口かもしれない。
『わ…私は友人を待っているの。わかる?だから…』
『うわぁ~い!お友達も来てくれんのぉ?嬉しいなぁ~あのね、僕、今日、誰か連れて来ないとクビだって言われてるのぉ。』
『えっ?クビ?それは、この不景気の中に大変…じゃなくて、あなたは私を客引きしてんの?まったく…。それで、あなたの勤めてる店って近くなの?』
『うん、すぐ近くだよぉ。歩いて103歩だよぉ~、ぷぷぷっ!おかしっ!』
『…そうなの。今日は遠くから来た友達をどこかに連れて行く予定ではあったのよねぇ。どうしようかしら…ねぇ、居酒屋さんなの?値段は安い?』
『和子、お待たせ。あれ?どなた?こちらの若い方は?』
『こんばんはぁ!お姉さんにね、一緒に飲もうって誘ってたの~ねぇ、お友達も一緒に行こうよ!』
『あのね、なんか事情があるみたいで、客を連れて行かないと、この人、クビなんですって。どうする?付き合う?この近くだそうだけど…。』
『まぁ、かわいそう。いいわよ、付き合いましょうよ。お姉さんだなんて…ねぇ?』
…美智子…あんた、標準語になってないかい?
『うわぁーい!じゃ、僕のアルバイト先のお店に行こう!ホストクラブ❤ラブラブっていうの~!!』
『…えぇ???』
『……んまぁ❤』
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