ー1ー

3/11

3522人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
「…………さむ………」 「そりゃ、そうでしょ………って………えーーっ!?」 寒いと呟いた彼は、俺にギュウっと抱き着いてきた。 「………えっ………ちょっ………まっ………」 「ん………あったかい………」 慌てふためく俺の事なんかお構いなしに、強く抱き着き、首元に顔を埋めている。 「………ちょっと待てぇーー!!」 俺は渾身の力を振り絞り、彼を引きはがした。 「………なん……で?」 「『何で?』じゃないだろっ!! 知らない人にいきなりそんな事したらダメだって!! あぶない人間だったらどうするんだよ!!」 「………あぶない……ヒト…………なの……?」 「イヤイヤ、俺は違うけど………ってこらぁ!!」 違うって言った瞬間、再び抱き着こうとした彼を押し留める。 「…………」 シュンとしている彼に、垂れ下がった耳としっぽが見えた気が…… 「はぁ。……しゃあないか。あのさ、ミルクティーって飲める?」 無言でコクンと頷く彼を見て、カバンの中から水筒を取り出す。 「これ、どうぞ。熱いから気を付けて。」 「んっ………おいし………」 笑顔で美味しいと言ってくれた彼から空いたコップを受け取り、自分の巻いていたマフラーを彼の首に巻いてあげた。 「これあげる。早く暖かいとこ、行きなよ。」 「…………」 「じゃあね。」 不思議そうな顔をして、マフラーをモフモフしている彼に手を振り俺はその場を後にした。 .
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3522人が本棚に入れています
本棚に追加