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「…………さむ………」
「そりゃ、そうでしょ………って………えーーっ!?」
寒いと呟いた彼は、俺にギュウっと抱き着いてきた。
「………えっ………ちょっ………まっ………」
「ん………あったかい………」
慌てふためく俺の事なんかお構いなしに、強く抱き着き、首元に顔を埋めている。
「………ちょっと待てぇーー!!」
俺は渾身の力を振り絞り、彼を引きはがした。
「………なん……で?」
「『何で?』じゃないだろっ!!
知らない人にいきなりそんな事したらダメだって!! あぶない人間だったらどうするんだよ!!」
「………あぶない……ヒト…………なの……?」
「イヤイヤ、俺は違うけど………ってこらぁ!!」
違うって言った瞬間、再び抱き着こうとした彼を押し留める。
「…………」
シュンとしている彼に、垂れ下がった耳としっぽが見えた気が……
「はぁ。……しゃあないか。あのさ、ミルクティーって飲める?」
無言でコクンと頷く彼を見て、カバンの中から水筒を取り出す。
「これ、どうぞ。熱いから気を付けて。」
「んっ………おいし………」
笑顔で美味しいと言ってくれた彼から空いたコップを受け取り、自分の巻いていたマフラーを彼の首に巻いてあげた。
「これあげる。早く暖かいとこ、行きなよ。」
「…………」
「じゃあね。」
不思議そうな顔をして、マフラーをモフモフしている彼に手を振り俺はその場を後にした。
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