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首を竦め足早に歩く。
「………やっぱりマフラーなしはさみぃ………」
それにしても、さっきの彼……
超美形の無口なワンコ君。
「………早く帰って、マンガ描きたい……」
まだ登校すらしてないのに、帰る事を考えている俺は重症だな。
サボる訳にはいかないから、頭の中を妄想でいっぱいにしながら学校への道程を歩く。
「…………喧嘩……喝上げか?」
人気のなさそうな路地裏から、少し騒がしい声が聞こえた。
ちらっと覗いてみると、2人の男のコが大勢の男に囲まれている。
「…………」
近くを通る人達が一瞥している所を見ると、みんな気付いてはいるんだろう。
だけど、自分には関係ないと言った表情で通り過ぎていく。
「………………あぁ、くそっ!!」
俺だって関わりたくねぇよ。
喧嘩なんかした事ないし、腕が立つ訳でもないし………
だけど、こんな所見て、素通りなんかできる訳ないだろ………
「何してんだよっ!!」
王道マンガだったら、ここで颯爽と不良共を倒したりするんだろうな、なんて考えながら、2人を庇うように立ちはだかった。
「あ゙ぁ?」
「うっ………」
『ごめんなさい。』と言いそうになる唇を噛み締め、一息ついてから口を開いた。
「あのですね、こう言う事は良くないかと………」
へっぴり腰に、最後まではっきりと言えない言葉。
我ながら情けないと思う。
「何だテメェ?なめてんのか!!」
「ひっ!!」
怖い顔をした不良さん達が、俺に向かって拳を振り上げた。
(殴られるっ!!)
これから来るだろう衝撃を堪えるため、固く目を閉じた。
だけど、いつまでたっても衝撃は襲って来ない。
「………?」
恐る恐る目を開けると、足元には伸びている不良さん達。
視線を上げると、後ろにいたはずの2人が俺の前に立っていた。
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