あの夏の日

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「まさき兄ちゃーん!!」 「これ見てよーっ!!!」 「お前らそんなに慌ててどうしたんだよ?」 僕らは得意気に答えた。 「見つけたんだ!!!」 「捕まえたんだよ!!!」 まさき兄ちゃんは笑った。 「お前達が言ってた何とかの蝉?」 「「黄金の蝉!!!!!」」 「へー。良かったじゃん。」 「あー…信じてないでしょー。」 「へいへい。捕まえたんだろ?見せてくれよ。」 待ってましたと言わんばかりにユウジと僕は捕まえた黄金の蝉を見せようとした。 「あれ?」 虫取りかごを持っていたユウジが呟いた。 「むねりん…いないよ…。」 「そんなはずない!もしかしてユウジ、ちゃんとかごのふたしてなかったんだろ!」 「違うよ!俺、ちゃんと閉めた!」 「嘘だ!ユウジのアホ!」 「むねりんのバカ!」 僕達は半べそをかきながら言い合った。 「二人とも落ち着けって。な? いなくなったなら、もうしょうがないじゃん?」 まさき兄ちゃんの言葉で喧嘩は終わった。 「俺はもう練習行くから、二人とも仲良くしろよ。」 じゃあな、と軽く言ってまさき兄ちゃんは帰っていった。 その日、僕達は一言も口をきかなかった。
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