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「竜ちゃん、遅い!」
眉根をひそめ、頬を膨らませて【仔犬の娘】が言う。
彼女なりに精一杯の怖い顔をしているのだろうが、彼女のそれでは小動物めいた愛嬌があるばかりで、怒っているとは分かっていても怖さはまるで感じられない。
「あっはは、ゴメンよー。
いつものネトゲが思いのほかキリ良く行かなくってさ」
「むぅ……また夜遅くまでゲーム?
というか! また、そんな下らない理由で遅れてきたの!?」
「いや~、ゴメンゴメン。
でも下らないとは言わないで欲しいね。あれ、面白いんだよ。“仔犬”もやるかい?
……ああ、きみにゃ無理だったか」
「あ、ヒドい! もう、ヒドい!!
ひ~ど~い~よ~~! 夢さ~ん、竜ちゃんが虐める~!」
「いや…ぼくに助けを求められても困るんだけどね……」
ちっとも済まなそうでなく言う(しかも皮肉めいた返しまでやってのけた)彼女に、【仔犬の娘】は、まるっきり子供が駄々をこねるようにして悔しがっていた。
気持ちはよく分かるのだが……割って入って二対一にした所で、彼女に口喧嘩で勝てるとは、それこそ夢にも思えない。
だから【仔犬の娘】には悪いけど、頭を撫でて慰めるだけにしておく。
口の上手い女性との口論なんてするもんじゃない。下手にトラウマを増やすだけだ。
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