仮面の男が噂を語る

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 それは小さな影。 仰向けで寝転んだ彼の顔の上を、フッと横切っていった黒いシルエット。 そして悪いことに……いやまあ、仕方ないとは思うけど……彼はそれを、目で追ってしまったんだ。  そして彼は、より明確にそのディテールを目にしてしまう。 不規則なジグザグを描いてフローリングを這い回るソレを、一瞬ながらじっくりと観察してしまった。  ソレには六本の足と、扁平型の胴と、二本の長い触覚があった。 障害物を飛び越えて、ソレは、カサカサ…とか、ガサガサ……とか、そんな音を立てて部屋の隅へと走っていき、すぐに見えなくなった。  うん。 やっぱり「カサカサ」だね、あの音は  ……おや、何か言いたそうだね?
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