とある中年男の話

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すると男は大事そうに抱えていた通勤鞄から一本の太いロープを取り出した。 そしてベンチの正面にあるこの公園一番の大木の側にまで、すたすたと歩み寄って行った。 大木の側には庭師が置き忘れて行ったのであろう、手頃な三脚がある。 男はゴクリと唾を一つ飲み、一気に三脚を一番上にまで上がった。 そうして、また一つ溜め息をつき、額の汗を拭うと手近の太い枝にロープを括(くく)り始めた。 ロープを括り終えると男は一度、ロープがしっかりと括れているか引っ張って確かめた。 確認を取ると男は続いて括った際に余しておいた分のロープで輪を作り始めた。 そう、丁度頭が入る位の大きさのである。
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