玄い女神(ルン×サトリ)

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ソファに並んで座った目の前にとん、って。 「まずはコレをみて。想像力を働かせてみよう」 指先で摘んだ透明な水晶の置物を置いた颯君。 「あ、コレ…」 「ちょっとベッド脇から拝借してきたんだけど」 「それ。リングスタンドだろ?」 「違うよ。こんなコトしてるなんて。正直罰当たりだな…って俺は思う」 颯君はクロムハーツのリングスタンドにしてた、小野さんから貰った水晶の置物から指輪を外した。 その置物は。手のひらに乗るくらいの小さな受け皿の真ん中に、小指の第二関節くらいまでの突起があって、 「輪投げみたいだしリングスタンドにしか使い道ないだろ?」 空に向かって指を立てたみたいな形だから丁度良かったんだよ、って言い訳をする。 「まあ見てよ」 俺が持ってきたコーヒーフレッシュの爪をプチ、って折って蓋を開いたら。 中身を、置物の出っ張ったトコロめがけて、とろり、と流し始める。 透明だった小さな指みたいな突起が。白く緩く流れる液に塗れていく。 何故か凄く。 「ゴメン俺。――すっげー今。イケナイ想像したんだけど…」 「うん、さすがコノルン。ソレたぶん。正解だよ?」 「え?」 「コレの名前は『シヴァリンガ』。リンガってのは『しるし』…つまり。男性器のコト」 そして下の皿は。女性器。 「ヒンズー教では、この世界は、シヴァ神と妃神が交わって出来た、って。日本の国造りの神話みたいな話があってさ」 シヴァリンガから流れ落ちたコーヒーフレッシュが。下の皿に溜まってる。 「じゃあコレ…。カミサマがセックスしてるトコロってコト?」 「そう。丁度挿れたトコロを、女性器の内側から見ている図なんだ」 俺達飲みながら、何て話をしてるんだろう。 「インドの地方のヒンズー教の寺院ではね。シヴァじゃなくて、シヴァリンガそのものの信仰が盛んで。お賽銭払うとコップ1杯のミルクをもらえて。リンガに掛けるっていう参拝方法があるんだ」 「――余りに、直截的だな」 「アハハ。まあ。もともと生命力と豊穣を求めるっていう意味があるから。そうなるよね?」 じゃあコレをくれた、小野さんの真意は…?って考えながらグラスを傾ける俺に。 「――これは、お守りみたいな意味があるから。多分『五穀豊穣子孫繁栄』のおまじない的なコトだろうね。そして問題の。――黒い女神の絵」 って。床に置いてた額縁を立てた颯君は。こっちにそれを見せた。
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