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「――ルン?」
実はネットで見つけて迷ってたのがあるって、小野さんが言う。
「結局回って見た中じゃ選べなかったし…じゃあ何処かで晩飯しながら検索しようか」
「俺はゴハンゆっくり食べたい…」
食べてからオマエん家行くから、その時探そう?って。
「え?」
「――ダメか?」
そんな風に見上げながら可愛く首を傾げて尋ねるのは反則だろ。
「ダメじゃないけど…」
むしろ大歓迎だけど。
「じゃ。決まり。――とりあえずさ。ルン何処かこの辺でパンが美味い店知らない?」
――何時もの小野さんの我儘が始まるのが嬉しい、なんて思う俺は。やっぱり不治の病も末期症状。
持ってる限りの情報を搾るように思い出す。
「――焼きたてパン食べ放題とか…」
記憶では青山通りに面してて、凄く目立つ店だけど。確かラストオーダーが21時で22時閉店。
時計を見たらあと10分くらいで21時だ。
「多分この時間なら、人も少ないとは思うけど…あんまりゆっくりは出来な…「俺其処がいい!!」…解った」
小野さんの言うコトは絶対です。
何処から切ってもパンダ柄のパンダ食パンとか。イングリッシュマフィンとか、胡麻が沢山練りこんであるトレコンブロートとか。
小野さんは嬉しそうに俺の家のダイニングテーブルの上に並べ始めたから。
「こんなに買ってきてどうすんだ…」
あんなにレストランでパンをお代わりした挙句。手提げの紙袋一杯にするほどのお土産に小野さんは凄く上機嫌で。
「冷凍すれば1ヶ月は持つぞ?」
どうせオマエん家の冷蔵庫酒と氷しか入ってないし。家に遊びに来た時食べるから冷凍しておいて?なんて言う。
「え?俺がやるのか!?」
何で?
「俺にやらせるのか?」
冷凍庫ぐちゃぐちゃになっても知らないぞ?って小野さんに脅される。
「俺がやる…」
結局折れた方が負けで。
またニノに愚痴るネタが増えた。
ダイニングテーブルにモバイルパソコン置いて、小野さんが検索かけてる横で。
何故かパンをひとつひとつ丁寧にラップで包んで。密閉できる袋に入れていく。
「あ…あった。さっき言ってたのコレだぞ」
って小野さんがモバイルパソコンの画面を俺に見せてくれた。
「『地球外不動産販売』?――何だそれ」
胡散臭い、って思わず口から出かかったけど。凄く小野さんは真剣な顔。
「うん。月の土地をね?此処で売ってるんだ」
「え?月って個人で買えるモノなの!?」
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