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「俺もさ、気に入らない事あると自分の部屋でむぎー!!!ってなってモノ投げ散らかしそうになるけど。結局自分で片付けなきゃいけねぇって思うと空しくて出来ないんだよ」
それをまだ我慢できないオマエは、やっぱり末っ子だって。
よしよし、とでも言いそうな勢いで頭に手を載せられるから。
子ども扱いされた事が気に入らなくて、
「…んだよ!」
煩わしさに乱暴に手を払いのける。
「しょーがねぇヤツだな」
って苦笑いした小野サンは。
俺が蹴飛ばして横倒しになってた椅子を起こして。
ずれてた机の位置を元通りに直して。
水が零れた机と床を拭いて。
楽屋をキレイな状態に戻した。
「――」
まだふてくされて椅子に座って動こうともしない俺に。
「ルン。――オマエコレを、何にも関係ないスタッフにやらせるつもりだったなら、俺ホントに怒るぞ?」
って言われて初めて。
――は、って。気付かされた。
俺に向上心なんかない。
小野サンの言うとおり。ただ色んな事が気に入らないってだけで周りを困らせてるタダの我儘な子供じゃないかって思い知らされたら、
何処までも穏やかに子供に言い含めるように諭してくれる小野サンの前で。
凄く恥ずかしくなった。
慌てて椅子から立ち上がって。
「小野サン…――本当に済みませんでした!!」
腰が直角になるくらい、頭を下げたら。
「解ったならいい」
俺じゃなくて明日皆に謝れよ。って。起き直って見えた小野サンの顔は、ふにゃりと笑ってた。
「んじゃ。帰ろうか?」
「――はい」
「ルン。そんな凹むなよ、らしくねーぞ?」
晩飯奢ってやるから、って肩を叩かれて。
今日あれだけツイてなかったから、きっとバランスとるためにいい事が今日の残りの何時間で立て続けに起こるに違いないって思った現金な俺は。
「やった!!――じゃあ。其の後俺ん家来ない?」
って誘ったのに。
「ヤダよ。行かない。食べたら家に帰る」
オマエ最近二人きりになると怖いもん。って。
年末以来未だに凄く警戒されてるなぁ…って苦笑いしながら。
二人で仲良く、楽屋を後にした。
(了)
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