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またサクラの樹の下に戻ったら、幹に背中を預けて立って。
颯君を待つことにした。
風にあおられてひらりと飛び立つ花弁を、思わず手が追いかけて掴もうとするけど。
開いた手のひらには、何もつかめてなくて。
少しドキリとする。
――サトっさん…これから先の春は…ずっと一緒だよね?――
って颯君に尋ねられたあの日。
――春だけじゃないよ?今日からが二人で見る沢山の季節の、始まりの日だ――
って確かに応えたのに。
其の約束を、俺はちゃんと守ってこられたのかな、なんて、ふと思う。
「うーん。この一年の俺じゃあ。赤点スレスレじゃねぇか?」
その答えをくれるのは、
これから此処に現れる、俺の大切な人。
ざあ、と。俺のココロを見透かしたみたいにひとつ強い風が吹いて。
応じて一挙に舞い上がったサクラの花弁に、今度こそ、って腕を伸ばす。
「っ――」
握り締めた手のひらをそっと開いたら。今度は淡い色の花弁を捕まえてた。
「颯君。早く、おいで?」
って呟く。
また何度だって、このサクラの樹の下で誓いなおしてあげる。
颯君。
――これからも、ずっと、ずっと大好きだよ?
(了)
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