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7日前の学校イベントの日も実は。
『どうしたんですかアイダさん、凄く疲れてますよ?』
ってニノに本番でもツッコミ入れられてたから。もしかしたらあの頃から体調の異変を感じてたのかもしれない、って今更思う。
4日前、番組2本撮りの後。その日は俺の家に来るって言うから。一緒に帰ろうなんて示し合わせてたけど。
その日の撮影では、何時もみたいなムチャや馬鹿が少なくて。
リーダーくらい喋らなくて。
『アイダさんもしかして余り…元気ないか?』
なんて思ってたら。
2本撮りの終わった直後。楽屋に戻る途中で。
『どうしよコノルン…。胸が痛い。息…できない』
苦しい、って。
蒼褪めて俺の肩に力なく手を掛けてぐったりとカラダを預けてきた時には。
「――アイダさん?」
まずは体の熱さに、驚いた。
「ゴメン。とりあえず背中さすって…?」
「こうか?」
手で撫でた背中まで、燃えるように熱を持ってて。
「そう…、――っ!!」
いよいよ廊下で足元が覚束なくなって、肩に伸し掛かる重みが増す。
「――颯君…っ!手ぇ貸して!」
どうしたどうした、って後ろから寄ってきた颯君は。
「え!?アイダちゃん!?」
ゴメン俺、二人でじゃれてるのかって勘違いしてた。なんて。
俺の反対側から、アイダさんの腕を肩に掛けて支えてくれて。
「ニノ…、誰か呼んで車回して貰って!?」
って、指示をだしてくれてる。
俺はただ、アイダさんの体支えるだけで一杯一杯で。
何時もアイダさんが構って欲しくて伸し掛かってくるときに感じる重みは甘いのに。
あの時はただ、意思を持たない錘を抱えたみたいだった。
初めて向き合う事態。
しっかりしなきゃいけないって思うのに。
俺はただ、怖くて。
『左胸の自然気胸だ』
って聞かされたときには。
激しい運動や、管楽器を吹いたりすると起こるってのは知ってたから。
「ねえコノルン…。まさか。自分のせいだなんて、思ってるの?」
って、俺の腕の中から起き上がったアイダさんに聞かれて。
俺はアイダさんの澄んだ瞳に視線をあわせられないままで。
ひとつ頷いた。
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