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アイダさんは、前に入院した時。テレビに映ってるのが4人で、自分が居ないのを見て、
『欠けたくない』
って。切実に思ったっていうのを、事ある毎に話してたし。
俺達は、5人でtempestだってコトを、確認するみたいに何時も口にしてたけど。
最近そのコトバを聞くことが減ったのは多分。
どんな時も俺達の分母は5でしかなくて。
何があってもちゃんと帰る場所があるってコトが、アイダさんの中で納得できるようになったからだと俺は勝手に思ってたのに。
『アイダちゃん、入院してから食事摂れてないみたいだ』
なんて颯君から聞いて。
見た目は全然普通に見えるけど。抱き締められた腕の中のカラダは俺の知ってる形より少し小さくなってて、ホントはこの人痩せ我慢してるだけなんだってコトが実感できた。
「早く戻って来いよ」
アイダさん居ないと、調子狂う。
「――5人で。tempestなんだろ?」
急に、穏やかだったアイダさんの呼吸が乱れる。
「――っ!!」
「アイダさん!?」
回されてた腕を押しのけて、アイダさんの顔を確かめたら。
「だ…いじょ…ぶ…だよ?」
もー。コノルンが突然、俺みたいなコト言うから、驚いちゃったよ…。なんて。
必死に笑ってるのが、苦しそうで。もがくように俺の両肩に手を掛けてから。
「――コノルン。やっぱり。何時ものぎゅーってヤツ。して?」
こんな時でも、直ぐに応えてやれない自分が情けない。
「俺さ…。アイダさんのこと、苦しくさせてばっかりなんじゃないか?」
「まだそんなコト言ってるの?俺はね、息が苦しいより。ココロが苦しいほうがイヤなんだよ…」
だからほら早く、俺を安心させてって。腕を広げて求められるまま。
何時ものように、
俺の中で壊れてしまえ、ってくらい。
力任せに抱き締めた。
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