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部屋に入れないなんてウソだし。
心配で仕様がないから、もともと退院日には迎えに来て連れて帰るって思ってたんだ。
――とは、今更言えない。
アイダさんの考える事って良くわからないから。退院した足でホントに小野さんのトコロに行きかねないだろ、って思うと。
やっぱり今日来て良かった。
どうして俺は素直になれないのかと何時もココロの中で苦笑いしながら。
アイダさんに我儘言って、「しょうがないなあ」って言わせて散々甘えてるのは。俺のほうだ。
「――じゃあ翌日、対決番組だし。一緒に行こうね?」
早く俺も皆とゲームしたい。カーリングやりたい、って。今にもベッドから抜け出して走り出しかねないアイダさんに。
「まさか――知らされてないのか?アイダさん病み上がりだから、主なポジションはヤジとボタン押しだぞ」
これはもう、入院した直後には決まってたコトだ。
「え!?ウソ!カーリングは?」
「ダメ」
「ホッケーは?」
「ダメ」
「ビンゴは?シューターは?ピンボールは?クライムは?」
「全部ダメに決まってんだろ!」
う、ってひとつ呻いて、アイダさんが涙ぐむ。
――オイオイ、あいつらお見舞いに来た癖に、誰も肝心な話はしてくれてないのかよ!
――まあ、この人を納得させられるのは俺しかいない思ってくれたと、あくまで善意に考えるしかない。
「泣くな」
「大丈夫だから退院するのに!」
「皆心配してたんだぞ」
俺も、ってコトバは呑み込む。
「なあ、アイダさん――月曜日午後退院したら。その日はずっと一緒に居てやるから。何でも好きなもの食べさせてやるし。何でも好きなコトさせてやるから」
「好きなコト…なんでも?」
指でゴシゴシ瞼を拭いながら、急にぴた、って泣き止んで、上目遣いで俺のコト見るから。
「ただし!――下ネタ以外」
「何でもじゃ。無いじゃん」
今度は不貞腐れる28歳。
甘えたり、怒ったり、泣いたり、笑ったり、不貞腐れたり。
元気なアイダさんじゃないと、こんなに目まぐるしく表情が変われないよな。
「解ったから。――無理しない、程度に?な?」
俺だって。そんな小出しにしてたら理性のブレーキが何時壊れるか解らないのに。
「もー。ちゅーだけとか。同衾だけとかじゃ、誤魔化されないからね?」
俺から襲っちゃうからね?
「勝手に、しろ」
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