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「え?」
って俺がもう一度聞いたからって、ニノから返って来る答えが変わるわけじゃない。
『――だから。残念ながら俺達のトイカメラ大作戦は大失敗したみたいですよ』
「――何で?」
『知りませんよ!』
だって颯ちゃん電話の内容俺に聞かせてくれないんだもん!なんて。
見えないけどニノは口尖らせて不満爆発させてるのが解る声だから。
義理堅い颯君の口割らせるのは、難しいよな…。
『まだ日本脱出してから一枚しか撮れてない、ってコトだけは解りましたけど。もう明後日は帰る日でしょ?』
あと撮れるチャンスあるの、明日だけ?
そうは言っても映画撮りのスケジュールはビッシリだって聞いてたから。
何だよそれ…。
成田では笑って『アリガトウ』って受け取ってくれたはずだよな。
『あ…ルン君また思考がデフレスパイラルじゃないですか?』
「オマエがそんな情報寄越すからだろ?」
しかもその情報も断片的でモヤモヤさせるだけさせられて。解決するにもどうしたらいいのか解らない。
『取り合えず一報まで、って思ったんだけど。ゴメンね――こうなったら…颯ちゃんは、俺が何とか吐かせるから』
一緒に考えましょう、とまで言ってくれるけど。
「いいよ。返って何か悪かったな、気ィ使わせて…」
ニノが電話越しに何度も謝った後で。
――じゃあ…。
「『おやすみ…』」
って電話を切ってディスプレイ見たら。お休みの時間というより。
『――もう朝じゃねえか』
午前4時。
そのままスマホの電源まで落として、ベッドに放り投げる。
小野さんがカメラ使ってないってコトはショックだったけど。
――良く考えたら。
何で電話かけてきたのが颯君のトコロで俺んトコロじゃないんだ?
って今気付いたこっちの方がダメージデカくないか?
ひとつ溜息ついたら。
とりあえず毛布を頭から被る。
――明後日の帰りの便、迎えに行ってみるか?
行ってどうする?
『ビビターどうだった?』
なんて。小野さん捕まえた俺は開口一番に尋ねそうだ。
俺がすることで困った顔とか怒った顔する小野さんは散々見てるから、できれば避けたい…。
なんて延々考えてるうちに。
『――嘘だろ?』
冬の凍てついた空が。
カーテン越しに、すっかり明るくなってた。
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