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インドから戻ってもう1ヶ月近く経った収録の日。
「なぁルン。今夜なんか予定あるか?」
って、マフラー結んで帰り支度してるルンに後ろから声掛けたら。
「――別に無いけど」
「俺と付き合って」
「え?」
怪訝な顔で振り返られた。
「――顔貸せって言ってるんだ」
「何だびっくりした。俺達付き合ってるの『俺達付き合ってないだろ』に…――って、えぇ!?」
俺が被せるみたいに力強く否定したから。
肩を震わせてくつくつと喉の奥で笑いを堪えるようにして近づいて来たニノに。
「残念ルン君。――何だか最近のアナタ、とっても面白くて、いいよ?」
お疲れ、ってルンは肩を叩かれてる。
アハハ、って大口開けて笑った颯君にも。
「そんなキミには俺の持ってる『残念王』の称号。喜んで譲ってあげるよ?」
それでは残念王コノルン乙デス!なんて言いながら、肩を叩かれそうになって、さ、ってすかさず避けたら。
「要らねェから」
そんなコワい菌感染させんな!!って颯君を手で追っ払ったのに。
「――じゃあ代わりに俺の『残念大王』の称号を授けてしんぜよう!」
って。後ろから忍び寄ってきてたアイダちゃんに両手を肩に乗せられて。
べったりと背中を何か塗りつけるみたいに、撫で降ろされたから、
「ぅわ!!何してんだよ!?」
って、背筋を凍らせてる。
「リーダー乙でーす!」
「はーいアイダちゃんお疲れ~」
俺に手を振ってから、ニノと颯君を追い駆けて出て行ったアイダちゃんに。
「アサキふざけんなッ!!」
って悪態ついてるから。
「アハハ。――もう残念でも何でも、いいじゃねえか」
俺も最近のオマエ、いいと思うぞ?って言ったら。
「ホントに!?」
なんて。たった今まで残念って言葉に激怒してたんじゃねえのか?
うわ、立ち直り早いなぁ…。
って言うかホントに俺のコト好きなんだなあ(笑)。なんて。自惚れは置いておいて。
「――インドの写真。上がったから取りに行って。一緒に見ながら飲もうかって思ったん…うわ!」
俺の腕掴んで、引っ張ったら。
「行こう!」
早くしないと、閉店時間になるだろ?なんて、凄い速さで歩き出すから。
「解った!解ったから」
足が縺れる!!って。歩幅の違うルンにあわせるのに、ちょっと早足になった。
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