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俺があんまりあっさりと否定するから、
「何だよ――未だに嵌まってんの俺ばっかりかよ…」
って、ルンは隣で溜息ついて肩落としてる。
――嵌まっては居ないけど。オマエのコト気にはなってると思う、なんて言ったら。またルンは解りやすく笑顔になるんだろうけど。
まだ今は、教えてあげない。
「ホラ、晩飯行くぞ?」
しょげてる背中をバシ、って平手打ちしたら。驚いた背筋がしゃき!!って面白いくらいに伸びて。
「――っっ…てぇ!」
息止まったぞ?って抗議してくるから。さっき叩いた手のひらで撫でてやる。
「ゴメンゴメン。何でも好きなもの奢るから…」
「――じゃあ、三層肉(サムギョプサル)が食べたい」
「えぇー?――俺肉じゃなくて魚な気分なのに…」
「小野さん何でもって言っただろ!?」
こういうやり取りだって、実はもう端から見れば『仲良し』に見えるんじゃねえのか?なんて思いながら。
スマホ取り出してグルメサイト見ながら、近くの韓国料理店を探してみた。
肉の表面にうっすらと焦げ目がついて、もういいかと思って箸を伸ばしたら。ずっと鉄板の上を占領してたルンに、トングで追っ払われた。
「まだダメ」
カリカリになるまで待てよって言われて。ただじーっと待たされて。ちょっとマッコリに口つける。
焼ける肉見ながら、サンチュだけ何枚もウサギみたいにむしゃむしゃ食べる。
「小野さん…肉焼ける前になくなるぞ?」
って、焼肉奉行みたいにルンがまだ肉をひっくり返してる。
「無くなったらまた頼むからいい」
って。また新しいサンチュ手に取ったら。
「――ほら小野さん」
ルンがやっと納得行ったのか肉を一枚のせてくれた。
「ねぎと、サムジャンを載せて、巻いて食べる」
って。言われたとおりにして、思い切り口開けて突っ込んだ。
――もぐもぐ。
「ん?」
脂身凄いな~って思ってた割りには、ちゃんとじっくり焼いて脂を落としてくれてたから、全然しつこくない。
ウマイだろ?って言いたげにじーっと俺のコト見てるルンに。
「ん~」
うんうん、って何度も頷いて。
ごく、って飲み込んだ後。
「美味い」
お代わり、ってサンチュ広げてさし出したら。
「そっか、美味いか~」
って。ルンは自分が食べるのそっちのけで、また食べごろの肉を載せてくれた。
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