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「かぁず。」
カツカツとチョークの音の響く教室で。
数字は睡魔の中のラスボスみたいなもんだと威張って言ってた彼は、やはり寝ていたのであろう。
(…頬っぺたに制服の跡ついてるし。)
寝ぼけ眼で掠れた声で俺を呼ぶ仁に、不覚にもドキッとしてしまった。
「…んだよ。」
赤らんだ頬を隠す様に頬杖をついて、黒板の前で授業する中丸先生の頭を見つめていれば。
引っ張られる制服の袖。
仁を見れば「これ見て。」とノートの端っこを、人差し指でぽんぽんと叩いていた。
『今ちょーセックスしたい。』
そこに書かれていたのは、予想外に卑猥な言葉で。
驚いて仁を見ると、仁の顔には悪戯心で満ちていて。
いや、違う。
目は獣の様に怪しげに光り、口元は厭らしく歪んでいた。
そんな仁の表情に、俺の下半身がどくっと疼いたのを感じたけれど。
『無理に決まってんだろ。』
欲望と体裁を秤に掛ければ、体裁のが大事なのが、一目瞭然なんだから。
『でも、たっちゃったし。』
『なんで?中丸見て興奮したの(笑)?』
からかいを含んだ視線で仁を見上げれば、仁はむっとしてから俺の耳朶を噛んだ。
「んっ…。」
ぞくぞくっと背中を走る快感に思わず声が漏れて、慌てて口を閉じる。
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