華に恋する

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「ごめん、手を洗ってくるね」 そう言って彼女は、少し小走りで水道の所へと走っていった。 「大丈夫かな…」 最近、よく咳込むようになったし顔色も悪いときもある。 「どうかした?」と聞いても、「大丈夫」と言って、微笑んでいる。 その微笑みも、無理に作ったようだった。 いつもそうだ。 他人に迷惑をかけたくないからなのか、絶対に誰にも頼らない。 どんなときも、自分にむち打って無理している。 「俺ってそんなに頼りないのか…?」 俺の微かな呟きは、渡り廊下を騒ぎながら通った女子たちによってかき消された。 「少しは頼れよな…」 俺はため息をつくと、何故だかは知らないがさっきの女子たちを軽く睨んだ。
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