華に恋する

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少しの衝撃で彼女は壊れてしまうのではないか、と思った。 薄氷のように、パキンと美しい音を奏でながら。 「ゴホゴホ…ッ」 彼女は口に当てていた手を離し、自分の手のひらを見た瞬間、時が止まったかのように固まった。 彼女の手のひらに何があったのかは、この角度からは分からなかった。 「どうしたの?」 「…咳したからかな、唾が…」 「ああ…」 それだけのことに、こんなにも大げさな反応をするんだな、と思った。 でも、そんな一面があることが、彼女の最大の魅力なんだと思う。
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