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「苦しいか? 苦しいよなぁ、当たり前だ。苦しくないはずがない、苦しいなら楽になるか? なりたくないよなぁ、人間は死ぬのが一番怖いのだから……」
「ぐっ……がぁ……かはっ……」
「……汚い声だな、聞くに堪えん、いい加減その顔も表情も見飽きたんでな。」
さて…………
「そろそろ宴も酣だな。
俺とお前の黒き宴も、ついには終焉……だ。」
物事には始まりと終わりがある、そんなもんは端から決まっている、抗いようなどない……。
人間は母の腹から生まれ出てこの世界に存在した瞬間に”始まりが終わり”
”終わりが始まる”
生まれ、生きることを掴んだと同時に、死ぬことも約束される。
生と死、表裏一体、生きる宿命、死ぬ宿命、どれも逃れる事の叶わない、永遠のサイクル。
「どれ……そろそろ離してほしいかね? 終わる者よ
そしてまた、始まりに戻りたまえ」
「だっ……れがぁ……がっ! ……い゙い゙がら゙ぁ……はな゙ぜぇ……」
ふむ、喉を締め付けているせいで声が上手く出せないか、やれやれ、
世話が焼ける少年だな、本当に……焼けるなぁ……少年よ。
「そうかそうか、わかったわかった、離してやる離してやる、お前のその苦しそうな表情はもう十分なんでな、離しやる、が」
「うぅ……ぐっ……あ゙ぁ゙」
もがき苦しむ少年に俺はそっと一言
「…………後悔はするなよ? 惨めだからな。」
俺はそう呟き、目を細めて、その手を離した
「ゔわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!!!!!」
手を離したのもつかの間、物凄い絶叫とも悲鳴ともつかない声ならぬ声が俺の耳を襲う、正直煩わしい……
「あ゙づい! あづい! あ゙づい゙ぃい゙!!!!」
少年が悲痛な叫びをあげながら地面をのたうちまわっているのを見て俺は言う
「熱いのは当たり前だろ、火を纏っているのだからな、むしろ熱いより痛いのが正しそうだがな。」
俺が手を離した場所、それは先程俺が放った火が轟々と燃えている場所だ。
締め上げられた苦しみで気づかないにしても、ここまで馬鹿とは、やはりこの少年は救い用がなかったとしか思えんな
「では、これにてさらばとしよう少年よ、もう会うことはないだろうが、それがお前最期というわけだ。」
じゃあな。俺はそう一言言い少年から背を向け歩いてゆく。
言葉はもう、少年には届いていない…………。
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