老狐の夢

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春先を思わせる、薄い色合いの下草が生え揃う野原。数里に渡る様が草原に似たそこに寝転ぶ人型の影が一つ。 薄茶の髪と同色の睫毛をもつ瞼は閉ざされ、仰いだ胸元に手を添えた人型は肉の薄い胸を静かに上下させている。 辺りに他の生き物の姿のない中とはいえ、一切の警戒を見せない。 穏やかな日差しに当てられたのだろう、人の形をした彼はどうやら完全に寝入っていた。
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